「離婚しようかな・・・」初めてそんなことを考えたとき、同時に、複雑な手続きが必要なのでは、いろいろなことを考えなければならないのでは・・・と不安でいっぱいになることと思います。
しかし、離婚のときに考えるべきポイントは、思っていらっしゃるよりもシンプルです。
持つべき視点は、次の3つです。
この3つの視点から、いくつかのポイントについて考えてみましょう。
離婚に際して、初めに考えるべき視点です。全てはここがスタートになります。
相手方が同意していれば、離婚すること自体にはあまり問題はありません。あとは、子どもに関することとお金に関することだけ考えればよいのです。
まずば、離婚すること自体を考える必要があります。
この場合、法律に定める「離婚原因」があれば、相手方が離婚に同意していない場合でも離婚することができます。
相手方の同意がある場合、あるいは、相手方は同意していないけれど離婚原因があって離婚が可能な場合、次に考えるべき視点は、子どもに関することです。
子どもがいないご夫婦の場合は、この視点は考える必要はありません。
子どもに関することは、次の3つの点をどうするか考えましょう。
夫婦間に未成年の子どもがいる場合、離婚に際しどちらかを親権者と定める必要があります。親権者を夫と妻のどちらにするかは、子どもの年齢・現在の生活状況・兄弟の状況などを考慮して決められています。
養育費は、一般的に、未成年の子どもが成年するまでとされています。最近は、夫婦の合意により,大学卒業の年までとすることも多々あります。
養育費の金額は、通常、家庭裁判所が出している「算定表」という,夫と妻の年収から導き出される養育費の額を表にあらわしたものを基準にして算出されます。
一度決めた養育費の金額についても、事情の変更によっては、増額や減額を請求することもできます。
多くのケースでは,離婚に際し,子どもの親権者(あるいは監護者)とならなかった親(非養育親といいます。)が、子どもと会う方法を決めておきます。
子どもに関することは,子どもの意向,これまでの養育環境,離婚後の環境等を考慮して決めることになります。
最後に、どの夫婦でも離婚に際し、考えなければならないのは、お金に関することです。一番現実的でややこしい問題かもしれません。
特に、専業主婦(主夫)だった場合など離婚によって一気に生活の目途が立たなくなる場合には、新たな生活を始めるためにも、しっかりと考えておく必要があります。
次の4つの点を考えましょう。
結婚している間に夫婦の協力によって形成された共有財産(たとえば、婚姻中に貯めた預貯金、婚姻中に取得した不動産、住宅ローンなど)はどのくらいの金額か?それをどのように分けるか、という財産分与の問題です。
相手方に不貞(浮気)があった場合が、慰謝料が発生する代表的な場合です。
専業主婦(主夫)でも、相手方が厚生年金に加入していた場合には、合意によって、婚姻期間中の厚生年金の基準標準報酬の改定をすることで、厚生年金を受け取ることができます。
夫婦関係がうまくいかなくなった場合、ある程度の別居期間をおいてから離婚をするということがよくあります。
別居によって、収入の少ない方の妻(夫)の生活が苦しくなってしまった場合、夫婦には婚姻費用の分割義務がありますので、夫(妻)に対して、生活費(婚姻費用)の請求をすることができます。婚姻費用は、家庭裁判所が出している,双方の収入を基準にした「算定表」を参考にして算出することが多いです。
夫婦の形は様々ですが、離婚の形も様々です。これまで述べてきた視点のうち、どれが重要な視点かは、人によって異なります。
当事務所では、これまでの相談・受任の経験をもとに、依頼者の方々の状況を的確に把握して、重点的に考えるべきポイントを見つけ、それぞれに最も適した解決方法をご提案いたします。
離婚のことでお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。
婚姻中は、父母ふたりともが親権者です(共同親権)。しかし、父母が離婚した場合が、未成年の子どもは、父母のいずれか一方の単独親権に復することになります。つまり、どちらか一方を親権者に決める必要があります。
子どもが複数いる場合は、それぞれの子どもについて親権者を決める必要があります。未成年の子どもがいる場合、親権者を父母のいずれかに定めなければ、離婚することはできません。
父母のいずれを親権者にするかは、まずは話し合いで決めます。協議離婚の場合で、話し合いで親権者を決めた場合は、離婚届に親権者を記入する欄があります。どちらを親権者にするかを離婚届に記入し、これを届け出ると、これがそのまま戸籍に記載されます。
ここで注意するべきなのは、一度親権者を届け出てしまうと、後から親権者を変更することは困難だということです。
親権者を変更するには、家庭裁判所に申し立てをして、これが認められることが必要です。
この申立ては簡単に認められるものではありません。
早く離婚したいがために、親権者を相手方に指定することに応じてしまったけれど、後からやはり自分に変更したい・・・といってもこれはなかなか認めらないのです。
親権者の決定は、よく考えて慎重に行う必要があります。どちらを親権者にするか、話し合いで決まらない場合は、調停や裁判によって家庭裁判所が親権者を決めます。
裁判所は、どちらを親権者にするかは、子どもの利益や福祉を基準にして判断します。つまり、どちらの親を親権者と定めた方が子どもにとって利益があり、また、幸福かということで判断するということです。
親権とは、子どもに対して親が有する身上監護権と財産管理権の総称です。
親「権」という名称から,親の権利と思われがちですが,親権には権利と義務の面があるものの、実際には義務の要素が強いものです。
子どもの世話、しつけや教育を行ったりする権限です。
子どもに財産がある場合には、これを管理する権限です。
また子どもが法律行為をする必要がある場合に、子どもに代わってその行為を行う権限もあります。
家庭裁判所の判断では、次のような要素が考慮されます。
監護に対する意欲と能力、健康状態、経済的・精神的家庭状況、居住・教育環境、子に対する愛情の程度、実家の資産、親族・友人等の援助の可能性
年齢、性別、兄弟姉妹関係、心身の発育状況、環境の変化への対応性、子自身の意向
このうち、よく取り上げられるのは次の点です。
それまでの養育環境にもよりますが,乳幼児の場合は、特段の事情がない限り、母親が親権者となることが多いようです。
子どもを育てる養育費・生活費を確保できるかということです。もっとも、これは相手
方からの養育費の支払いによって一定程度解決できますので、必ずしも重要な要素とはなりません。
兄弟姉妹を分離することは、子どもの人格形成に深刻な影響を及ぼすため、原則として親権者を分離しません。
もっとも、一定以上の年齢の子どもの場合には、子ども自身の意向によっては、親権者を分離することもあります。
15歳以上の子どもについては、家庭裁判所は親権者の指定にあたり、子ども自身の意見を聞く必要があります。それ以下の年齢でも、おおむね10歳程度からは、子どもの意思が尊重されます。
子どもの現在の環境を尊重し、特段の事情がない限り、離婚の時点で現実に子どもを監護している方を優先させることが多いようです。
養育費とは、未成年の子どもが社会人として自立するまでに必要となる費用で,親が負担すべきもののことです。
日常の生活費はもちろん、学費や医療費なども養育費に含まれます。
子どもがいる夫婦が離婚を考えた場合、養育費のことはとても気になる問題です。
養育費を支払う期間は、子どもが成人になるまでとすることが多いでしょう。もっとも、最近では、大学進学率が高いことから、夫婦の合意で大学を卒業する22歳までとすることもあります。
養育費の金額は、まずは話し合いによって決定します。どうしても話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。
また、離婚裁判に付随して、養育費の金額の決定を求めることもできます。
養育費の額は,基本的に、父母双方の収入(年収)を基準にして算定されます。
養育費の金額の目安になるものとして、家庭裁判所が出している「算定表」があります。
養育費の支払いは、財産分与や慰謝料と異なり、子どもが成人するまで等継続的に行われることが通常です。月に1回の支払いとすることが多いですが,一括で支払うこともあります。
子どもがまだ幼い場合には、養育費の支払い期間が長期間にわたることになりますので、長期的な支払いを確保できるような支払の内容や方法を定めておくことが重要です。
また,協議離婚の場合でも,「執行受諾文言付き公正証書」で養育費の支払いについて取り決めをしておくことで,不払いの場合の,財産(給与等)の差し押さえを簡便に行うことができるようになりますので,これも検討しましょう。
一度決めた養育費の金額は基本的には変更できません。
もっとも、養育費を支払う側が、失業したり、給与が下がったり、逆に給与が大幅に上がった場合や,家族構成が変わった場合など、経済的な状況が大きく変化した場合には、一度決めた養育費の金額を減額あるいは増額することが認められることがあります。
財産分与とは、結婚してから離婚するまでの間に、夫婦で協力して築き上げた財産を離婚の際に夫と妻とで分けるというものです。
「財産なんて大してないから・・・」「住宅ローンしかないから・・・」と、財産分与をしないで離婚しようとする人もいますが、離婚後に新たな生活を歩んでいくためには十分な検討をした上で判断する必要があります。
財産分与の対象となる財産は、①共有財産、②実質的共有財産があります。
土地や建物など、結婚後にお互いが協力して取得した、夫婦共有名義の財産です。
預貯金、株、どちらかの単独名義となっている不動産など、結婚後に夫婦で協力して取得した財産ではあるが、夫婦の一方の名義になっている財産のことです。①だけでなく②も、財産分与の対象となることに注意が必要です。
これ以外の、結婚前に貯めた預貯金や、婚姻前に購入した財産、相続によって取得した財産は、特有財産となり、財産分与の対象外ですので、離婚に際し、分ける必要はありません。
財産分与では、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、住宅ローンなどの借入金等のマイナスの財産も財産分与の対象となります。
財産分与には、次の3つの要素があります。この3つの要素を考慮し、財産分与の金額を決定しましょう。
夫婦が結婚生活中に築いた財産を、離婚の際に清算して分配するものです。一般的に財産分与というと、これを指すことが多いでしょう。
原則として夫婦で築いてきた財産を2分の1ずつ分ける(2分の1ルール)ことが一般的です。
慰謝料的な意味合いを含めて財産分与を行うこともあります。この場合、財産分与に慰謝料分が含まれることになりますので、別途慰謝料を請求することはできません。
専業主婦(主夫)であった一方当事者が、離婚後、高齢や病気の為に働けない場合や幼い子どもを養育しているために働けない場合など、離婚によって、一方当事者が経済的にひっ迫することがあります。
清算的財産分与を行い、慰謝料が発生する場合にはそれを支払ってもなお、一方の生活が経済的に厳しい場合、経済的な自立の支援として、2年~3年間生活費が支払われることがあります。これが、扶養的財産分与です。
財産分与は、まずは話し合いによって決定しますが,話し合いで決められない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることができます。離婚の調停や審判と同時に申し立てることが多いですが、離婚後に独立して申し立てることもできます。
まずは離婚をして,その後に財産分与をしようと考える場合は,財産分与には請求できる期間の制限があることに注意しましょう。
離婚から2年経過すると、財産分与請求権は消滅してしまいます。
必ず離婚から2年以内に財産分与を請求することを忘れないようにしましょう。
「慰謝料」という言葉は、テレビドラマや日常生活でも耳にすることが多いと思います。
しかし、法的な意味での慰謝料について、正確に理解されている方は少ないのではないでしょうか。
慰謝料とは、相手方からの不法行為によって被った損害のうち、精神的な損害を慰藉するための損害賠償金のことです。
離婚の場合では、例えば、不貞行為(浮気行為)や暴力など、離婚をする原因を作った相手が行った違法な行為から生じた精神的な損害に対する賠償金や、離婚をせざるを得なくなったことで、配偶者としての地位を失ったことによる精神的な損害に対する賠償金があります。
・不倫や浮気をされた場合
・DV(配偶者からの暴力)を受けた場合
・生活費を一切渡してくれない場合
・通常の性的交渉を拒否された場合
・相手側に離婚に至った原因がない場合
・お互いに離婚に至った原因の責任がある場合
・性格の不一致・価値観の違いによって離婚に至った場合
慰謝料の金額には、特に計算式があるわけではありません。
一般的には、次のような要素を考慮して金額を算出されます。
・離婚原因となった行為の責任の程度
・精神的な損害(被った精神的苦痛)の程度
・婚姻期間の長さ
・年齢
・未成年の子どもの有無・数
・慰謝料を支払う側の社会的な地位や支払能力
・慰謝料を請求する側の経済的な自立
・慰謝料を請求する側の離婚に至った原因についての責任の有無や程度
慰謝料の金額としては、裁判では200万円~300万円程度が平均的です。裁判外で慰謝料の交渉を行う場合も、裁判になった場合を想定しながら交渉を行いましょう。慰謝料の請求は、裁判外で直接行うこともできます。
裁判で請求する場合には、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起します。140万円以下の場合は、簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所に申し立てを行います。もっとも、離婚訴訟に付随して申し立てる場合には、家庭裁判所に申し立てを行います。
慰謝料の請求はそれだけ独立して行う場合もあれば、離婚に付随して、財産分与などと関連させながら行った方がよい場合もあります。
また、裁判にした方がよい場合もあれば、調停を行った方がよい場合もあります。
まずは、離婚に詳しい弁護士に相談し、ご自身に一番合った方法を一緒に考えることをお勧めします。
離婚における弁護士費用については、「弁護士費用」ページの「離婚」をご参照ください。
離婚以外の交際トラブルにおける弁護士費用については、「弁護士費用」ページの「弁護士費用一般」をご参照ください。