おしらせ

姉はマイホーム購入のために父から2000万円の贈与を受けました。私は父からの 援助は受けず、一人で頑張ってきました。父が亡くなったら、姉と私の相続分は同じなので すか?

「特別受益」制度とは、共同相続人の中に、被相続人から遺贈を受けたり、また、婚姻や養子縁組の ため、あるいは生計の資本として生前贈与を受けたりした者がいた場合、その者については相続分の前渡しを受けたものとして、その者の相続分について減額調整を行うための制度です。

たとえば、被相続人Aに、共同相続人としてBCDがいたとします。そして、Aの生前に、BはAから多額 の現金の贈与を受けていたとします。他方、CDは、Aから何も貰っていなかったとします。

この場合、Aが死亡して相続が開始した後、BCDの相続分が全く同じであるとすると、Bだけが得をす ることになってしまってCDとの公平を害します。そこで、Bの相続分を算出するにあたって、BがAから生前に多額の現金の贈与を受けていたことを一定の計算方法に従って考慮して、Bの相続分を 減らし、その分CDの相続分を増やすという手当てをすることになるのです。

この特別受益制度は、多くの遺産分割において問題となり、遺産分割の話し合いの進行を阻害する 要因となります。

つまり、共同相続人の一人が他の共同相続人に対して、「○○は父の生前にたくさん金銭贈与を受 けていた。特別受益を受けている。」と主張するのです。こうなると、言われた方も、「いや、○○こそ、自宅を建てるときに父から援助を受けていたはずだ。これも特別受益だ。」と反論したくな ります。

こうして、共同相続人間で、貰った貰ってない合戦が始まり、はるか昔の少額の贈与などにも話が広 がっていくことがあるのです。

しかし、こうなると、遺産分割協議は全く進まなくなります。お互い、相手の特別受益を見つけ出し 指摘することが第一目標になってしまい、「今ある遺産をどうやって分割するのか」という本当の 目的を見失ってしまうのです。

特別受益を考慮して、共同相続人間の公平を実現することはとても大切なことです。ですが、それ ばかりに気を取られ過ぎず、現実に即した遺産分割を早期に実現するという本来の目的を見失わな いようにすることも同様に大切です。

なお、改正相続税法では、 「特別受益の持戻し免除の意思表示の推定」という制度がのできました。 これは、1婚姻期間が20年以上である夫婦の一方が、他方に対し、 2居住用の建物やその敷地を贈与(遺贈)した場合 に、持戻し免除の意思表示があったものと推定されるというものです。

これらの要件を満たせば、長年連れ添った夫婦間で居住用不動産を贈与した場合、わざわざ遺言 などで意思表示しておかなくても、持戻し計算を免除されます。

ご自身の贈与が特別受益に当たるかどうか不安があるという方はお気軽にご相談ください。