認知症,知的障害,精神障害などの理由で物事を判断する能力が十分ではない方々に家庭裁判所が本人の権利を守る援助者(成年後見人・保佐人・補助人)を選任し,法律的に支援する制度です。
認知症,知的障害,精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々は,不動産や預貯金などの財産を管理したり,身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり,遺産分割協議をしたりする必要があっても,自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。また,自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい,悪徳商法の被害にあうおそれもあります。このような判断能力の不十分な方々を保護し,支援するのが成年後見制度です。
成年後見人が選任されていることは,土地や会社のように「登記」されます。この「登記」を見ない限り,成年後見人が選任されていることは分かりません。成年後見制度の前身である「禁治産制度」のように,「戸籍に記載される」ことはありません。
成年後見制度は,ご本人の判断能力の程度に応じて,「後見」「保佐」「補助」の3種類があります。
後見 | 保佐 | 補助 | |||||
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対象となる方 | 判断能力が全くない方 | 判断能力が著しく不十分な方 | 判断能力が不十分な方 | ||||
申立できる方 | 本人,配偶者,四親等以内の親族,検察官,市町村長など | ||||||
成年後見人等の権限 | 必ず与えられる権限 | ●財産管理についての全般的な代理権,取消権 | ●特定の事項についての同意権,取消権 | なし | |||
申立により与えられる権限 | なし | ●特定の事項以外の事項についての同意権,取消権 ●特定の法律行為についての代理権 |
●特定の事項の一部についての同意権,取消権 ●特定の行為についての代理権 |
後見人(成年後見人・保佐人・補助人)は,本人の意思を尊重し,本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら,次の業務を行います。
後見人を誰にするかは、家庭裁判所が決めます。
親族が,全体の約28%。その他は弁護士,司法書士,社会福祉士などの専門職です。
高知家裁では,本人の流動資産が1,200万円以上の場合,原則として専門職後見人を選任する扱いとなっています。後見人には,職務の内容によって,ご本人の財産から報酬が支払われます(報酬額は,家庭裁判所が決めます)。
どの専門職が後見人に選任されるかは,職務の内容,ニーズによって決まります。
・多額の財産管理や法的な支援が必要⇒弁護士,司法書士
・福祉的な支援が必要⇒社会福祉士
・福祉的な支援が必要で,チームでの対応が必要⇒社協等の法人後見
親族と専門職,専門職と専門職などの複数の後見人が選任されるケースもあります。